「なぁに」
「春になったら何を拾うの?」
「え? 何だって?」
「拾ってみませんか,って言ってるよ」
「春になったら?」
「うん」
「誰が何を拾うの?」
「もうすぐ春ですね,ちょっと拾ってみませんか,って歌あるでしょ?」
「おー,キャンディーズか」
「うん。女の子が3人で踊って歌ってるの」
「いまどきキャンディーズを知ってる4歳児ってそんなにたくさんはいないだろうな」
「え?」
「いや,何でもない。それで何を拾うって?」
「ちょっと拾ってみませんか,って歌ってるよ」
「あーあれは,拾ってじゃなくて,ちょっと気取ってみませんか,って言ってるんだ」
「きどって?」
「そう」
「きどって,って何?」
「気取って,ってのは,気取るってことだけど,うーん,難しいね」
「ねぇ,気取るってどうすること?」
「気取るってのは,そうだね,かっこよく見せるってことかな」
「かっこよく? ゴーオンジャーみたいに?」
「うーん,ちょっと違うかも。本当はかっこいいんじゃないんだけど,オシャレとかして無理してかっこよく見せようとすることかな」
「春になったら?」
「そう。春になると暖かくなるから気持ちがうきうきするんだよ」
「パパも春になると気取るの?」
「うーん,気取ってみてもいいけど,気取ってみませんか,って言ってるだけだから,別にどうしても気取らなくたっていいんだよ」
「ふーん」
次は,恋をしてみませんか,って何? と聞かれるのだろうか。