2005年01月30日

訪問

教員になりたての時分には,こういう学生が年に1人か2人くらいはいたが,最近は年に5人か6人くらいいる。

私の自室は,大きな研究室の内側に含まれるような構造をしている。つまり,廊下側から研究室の扉を開け,我が愛弟子たちが勉学に勤しむ領域を通過して奥に進むと私の個室の扉がある構造なので,在室時はたいていその内側の扉を開けっ放しにしている。これが直接の原因なのかもしれない。が,閉めておくとなんだか中で極秘の作業をしているようで(実際,極秘の作業をするときは扉を閉めるが),開けておいたほうが自分も落ち着くので普段はそうしている。

愛弟子,すなわち研究室に所属している学生たちは,部屋の構造や私の習慣をよく知っているので何の問題もない。問題なのは,それ以外の学生たち,特に低学年の学生たちである。彼らが私を訪ねようと試みるときは,まず6階の廊下から通常は閉まっている研究室の外側の扉をノックする。すると学生領域にいる愛弟子の誰かが「どうぞ」と声を掛ける。するとその学生はおもむろに研究室に入って来る。ここまではまぁ常識的だ。先生の所在を確認し,私の自室の方へやってくる。内側の扉は開いており,すでに本人は私の研究室に入った気でいるから,そのまま前進して私のすぐ傍らまでやってくる。

たいていは気配で気付くが,ときにはいつの間にか自分のすぐ脇に見知らぬ人間が立っていてギョッとする。「誰だお前は」という顔で見るや否や,「あのぅ,先週の課題どうしてもできなくて出せないのですが…」などと素性も名乗らずにのたまう。私は極めて不機嫌になり,質問の内容などどうでもよく「何年生? 名前は? いったいどういう神経してるんだ?」などと口走る。相手はポカンとしてなぜ怒られたのかが分からない。

これが他の場所なら「出て行け!」で終わるところが,ここは教育機関なのでしっかり教育せねばならない。かくして汗だくになりながら人を訪ねる場合の作法を身振り手振り交えて教える羽目になる。いまどきの学生たちはみな素直なので,教えるとみな素直に頷き,はじめて「なるほど」という顔をする。この学生に限って,二度と同じことはしないだろう。

それを忘れた頃,見知らぬ学生がいつの間にかすぐ傍らに立っている。
posted by gecky at 07:42| 千葉 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | 教育・研究 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年01月29日

スクラップ

かつて私はスクラップ魔だった。新聞はなるべく隅から隅まで読み,気になった記事をジョキジョキ。雑誌なども捨てる前に気になったページをビリビリ。大学院生になった頃からは,忙しくなって新聞を隅々まで読む時間はなくなったが,それでも1995年頃まではスクラップを続けていたと思う。

「気になった」基準はけっこう曖昧で,簡単に言えば「後で読み返すかもしれない」である。したがって,テーマを決めてまんべんなく,といったものではないし,そもそも「読み返すかもしれない」のは「読み返さないかもしれない」であって,実際には読み返すことなど滅多にない。それでも,何らかの資料的な記事,たとえば,歴代の総理大臣の名前とか,大地震の記録とか,GDPの順位とか,通算本塁打数の記録とか,そういうよくまとまった資料を見かけると,こまめに切り取ってファイルに保存した。ファイルの数は膨大になったが,長年の経験から構築した画期的な方法に基づき整理していたので,必要な情報は即座に取り出せる自信があった(たぶん)。

スクラップをまったくしなくなったのは,ここ10年ほどのことである。理由は簡単で,ほぼあらゆる情報がインターネット上から容易に入手できるようになったからである。まぁここまではよくある話かもしれない。

しかし,思い返してみれば,インターネットを使い始めた当初(1993年頃)からごく最近までは,たとえば Web ページ上に有用な情報があると,つい自分の PC のハードディスク上に保存した。いつの間にかそのページはなくなってしまうかもしれないし,ネットワークにつながらない環境でその情報が必要になるかもしれない。こう見えても意外と慎重なのである。そうして保存された HTML ファイルも山ほどあるが,これも紙と同様の画期的な方法で整理していたので,必要な情報は即座に取り出せる自信があった(たぶん)。

それすらもしなくなったのは,ごくごく最近のことである。3年ほど前から,家でも仕事場でも外出先でも,いつでもどこでもインターネットにつながるようになり,すなわち,ほぼ完全な「ユビキタス環境」を手に入れたので,保存する必要すらなくなった。曰く,インターネット全体がスクラップブックであり,検索エンジンやブックマークを上手に利用すると,必要な情報は即座に取り出せる,かどうかは怪しいが,かつてのジョキジョキ,ビリビリのスクラップ時代が遥か原始的に思えるのは事実だ。あの頃からたかだか10年程度しか経っていないのが不思議であるが。

長年の経験から構築した画期的な整理の方法が使えなくなったのはちょっと寂しいが,目下の夢は,膨大に蓄えた昔日のスクラップを,すべてイメージスキャナで取り込んで電子化することである。他にもこういう夢はたくさんあるが,それはまた後日。
posted by gecky at 22:10| 千葉 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | エッセイ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年01月20日

電卓

電卓とパソコンとでは,明らかにパソコンのほうが高性能である。しかし,ちょっとした計算,たとえば386×512などという計算をする場合,目の前にパソコンと電卓があれば電卓を使うだろう。パソコンでも,たとえば「電卓」というアプリケーションを起動して計算できるし,UNIXのbcコマンドでも計算できるが,起動する手間や入力時の操作性を考えると,電卓のほうが圧倒的に効率がよい。そういうわけで,パソコンを前にしてわざわざ電卓を取り出して計算をし,その結果を改めてパソコンのキーボードから入力する,などという,考えてみればとっても非合理な作業を時々行っていた。

ところが,最近になって,便利な道具を手に入れた。それはUSB接続の電卓。普通の電卓にUSBポートがついており,計算結果をPCに送ったり,PCのテンキー(数字入力用キー)の代わりに使えるというものである。たとえば,先ほどのような386×512などという計算をする必要がある場合,電卓で計算をして「送信」というボタンを押すとPCに入力できる。それだけのものだが,これが非常にとってもかなり便利である。

かくして,これまで少なくとも10年くらいのあいだ仕事場のパソコンの横に(文字通り座右に)鎮座していた Texas Instruments 製の剛体電卓は引退してしまった。
posted by gecky at 23:56| Comment(1) | TrackBack(0) | 科学技術 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年01月17日

校正用語

校正のシーズンである。学生にとっては推敲のシーズンである。いや,推敲にはたどりつかず執筆のシーズンかもしれない。毎年この時期は赤ペンのインクがたくさん減る。

最近の学生たちはたいてい素直で従順だ。文章に赤を入れて返すと,まずほとんどの場合,その通りに修正してくる。時には「ここんとこ,先生はこう直されましたけど,私はもとの文章のほうがいいと思うんですけどー」などと言ってくる学生がいてもよいと思うが,そのようなことは年に1回くらいしかない。したがって,校正を限りなく繰り返すと,しまいには学生の文章だか私の文章だか分からなくなってしまうので,適当なところで打ち切る。どこで打ち切るかの判断が難しいが,もうだいぶ慣れた。

数年前のこと。やはり学生の文章を読みながら,うーん,ここの部分はちょっと違う言葉にしたほうがいいなぁ,と思って赤を入れた。文章の内容は忘れたが,仮に「本研究では,音響的な情報を用いて…」などと書かれていたとして,「情報」よりは「特徴」のほうがいいよな,と思い,「情報」を赤の二重線で消して下に「特徴」と書いた。が,再度読んでみて,まぁ直すほどのことでもないか,コイツの表現を尊重しよう,と,削除した箇所を再度丸で囲み,欄外まで線を引っ張って「イキ」と書いておいた。

修正されて出てきた文章を見たら「本研究では,音響的なイキを用いて…」と書かれていた。
posted by gecky at 22:50| 千葉 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | 教育・研究 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年01月16日

選択の自由

とある会員登録をすべく,氏名・住所など書式の項目を埋めていたら,職業の選択肢に来た。曰く,

・会社員
・会社役員
・自営業
・派遣社員
・専業主婦
・学生
・アルバイト・パート
・無職
・その他

で,これが選べる項目のすべてである。「アルバイト・パート」や「無職」という項目があるにもかかわらず,「科学者」や「大学教員」という項目がないのはけしからんと思う。せめて「教員」という選択肢くらいはほしい。

ここで「その他」に丸を付けると,何かとっても特殊な職業(芸術家とかタレントとか)に就いているようだし,私立大学もいちおう企業とみなすならば「会社員」でもよさそうだが,ちょっと会社員って感じではないので,もっとも近いのは「学生」? まぁこういうことはよくある。

「ご職業は何ですか?」と訊かれたときは,たいてい「教員です」と答えるが,通常,教員というのはいわゆる教員免許を持った小・中・高等学校の先生をイメージすることが多いらしく,よくある次の質問は「あ,先生ですか。で,何の教科を教えられているのですか?」である。ここで「あ,ディジタル信号処理です」とか「知覚情報処理特論です」などと答えてもいいのかもしれないが,それほどの情報提供を要しない相手の場合は,「あ,まぁ,理系の科目です」などと答えたりするから中学校の理科の先生だと思い込まれるのだろう。

でも本当は,「ご職業は?」に対しては「研究者です」とか「科学者です」と答えたいんだよなぁ。よく分からないが,「研究者」と言うと白衣を着て試験管を振ったりしている姿を連想され,「科学者」と言うとエジソンとかお茶の水博士のような人を連想されてしまい,それも当たらないけど,中学の理科の先生よりはよっぽどいい。

大学教員ってそんなに特殊な職業でしょうか?
posted by gecky at 23:49| 千葉 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | エッセイ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年01月04日

見られた

飛行機に乗る以外の用事があって,最近オープンした羽田空港の第2ターミナルへ行った。既存の第1ターミナルと対を成す構造なので,床やカウンターが少しばかりピカピカなだけでどうということはなかった。駐車場もまた,第1ターミナルに接する2つの駐車場(第1・第2駐車場)と対を成して第3・第4駐車場がある。私は第3駐車場に入った。どこにでもあるように,ゲートを通るときに機械から自動発行されるカード(駐車券)を取り,出るときに精算するシステムで,料金は30分200円である。

さて,ほぼ2時間ちょうどで用事が済み,ターミナルから駐車場に戻ったところにあった「料金事前精算機」に先のカードを差し込んだら,30分200円なので800円と出た。後でレシートをみたら2時間を2分過ぎていたが,2時間と計算してくれたのはなかなか良心的である。事前精算機があるのは,出口のゲートの混雑を和らげるためで,これもよくあるシステムである。

驚くべきことが起こったのは,車を動かして出口のゲートを出ようとした時である。つい今しがた精算したカードをゲートに差し込めば,踏切?のバーが上がって出られる,つもりだったのだが,ゲートに近づいたら自動的にバーが上がった。出口の精算機を見ると,電光掲示で「事前精算が済んでいますのでそのままお通りください」(細かくは違ったかも)と出ている。なぜこのゲートは私が事前精算したことを知ってるの?

と,家に帰るあいだずっと不思議だったのだが,手元に残った駐車券をよく見たら謎が解けた。そこには,私の車のナンバープレートの数字4桁が印字されていたのである。

つまり,入口のゲートを通るときに自動的にナンバープレートの数字を読み取ってカードに記録する。そのカードを事前精算機に入れるとホストコンピュータに通知されて,出口のゲートを通ろうとする同じナンバープレートの車に対しては自動的にゲートが開くらしい。

そういえば,高速道路のゲートでも車のナンバープレートを自動的に読み取って,不自然な動きをする車は摘発可能であるという話を聞いたことがある。というか,実際に高速道路の通行券の片隅には,自分の車のナンバーの下2桁が印字されている。あ,ばらしちゃった。
posted by gecky at 21:57| 千葉 | 交通 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年01月03日

専用道路

(昨日のつづき)

本当は,この後木更津から東京湾アクアラインに乗って,悠々と海ほたるなど見物してから帰宅する予定だったのだが,もしも首都高速が通行止めではいかにも不都合である。アクアラインもストップして,館山道と京葉道路もストップしたらオシマイだな。

にしても何故に通行止めか? と,ニュースに切り替わった大型スクリーンを見たら,なんと東京は大雪らしい。100kmも離れていないここはただの雨なのに…

そそくさと優雅な休憩を終わりにして,千葉の一般道での長期戦を覚悟しつつ再び雨の中を走り始める。とりあえず館山道は通れるようなので木更津北ICから進入。アクアラインも通行止めにはなっていない。仮に一般道経由でも,ここから我が家までは一旦川崎に渡ったほうが近いので,がら空きの海ほたるにほんの5分ほど立ち寄って川崎側に渡る。トンネルを抜けるとそこは雪国であった。

…というほどでもなかったが,通行止めのはずの首都高速にそのまま突入。先ほどの「首都高速道路全線」は正確ではなかったらしく,唯一首都高速湾岸線だけは通れるようである。というか,海ほたるの交通情報表示はそうなっていたのだ。アクアラインを渡った川崎側から横浜方向,つまり横浜のベイブリッジ方向は「雪のため通行止め」で,首都高速も1号羽田線その他ほとんどすべてが「雪のため通行止め」である。したがって横浜方向からの車が来ないので,我々の遥か前方から遥か後方まで車は1台もいない。こりゃ極めて快適である。

羽田空港の入口からもなぜか入ってくる車はなく,その後も東京港トンネル,レインボーブリッジからの合流を過ぎても一向に他の車は現れない。ひょっとして我々,通行止めの高速道路を走っているのでは,との不安がよぎるが,どこにも進入禁止などとは書いていなかったし,料金所のゲートもちゃんと通れたのだ。

有明でも新木場でも車は入ってこない。入口はなぜかすべて閉鎖されている。したがって並行して走る国道357号は大渋滞である。その渋滞を横目に,まるで赤い絨毯の専用道路の3車線をぐんぐん走り,以前深夜3時頃にここを走ったときにもこんなには空いてなかったよな,と思いながら1台も他の車のいない首都高速を爆走。ではなくて滑らないように慎重に運転して,無事に帰宅を果たしたのである。

家に着いてからインターネットの交通情報ページを見たら,はっは,いま通ってきた湾岸線もついに通行止めになっている。入口が閉鎖されていたのは通行止めにする前兆だったらしい。にしても,我が家の雨男は不運なのか幸運なのか,よく分からぬ。
posted by gecky at 22:02| 千葉 ☁| 交通 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年01月02日

シーワールド

年末に鴨川のシーワールドへ行った。本当は,プロヴァンスかゴールドコーストかキーウェストに行きたかったのだが,子持ちというか赤ん坊持ちにはそれはちと難しい。それで所要2時間で同じ県内の鴨川シーワールドへ行った。

ここは小学生の時に遠足で来たことがある。シャチやアシカが知的なショーを繰り広げてなかなか楽しかった。今回もまた楽しかったのだが,途中から雨が降り出した上,凍り付くほど寒い。子供が風邪をひかないように気をつけ過ぎて,親が2人とも風邪をひきそうになったので,夕刻を待たずに引き上げることにした。そもそもこの子を連れて外出するとよく雨が降る。私は晴れ男を自認しているし,妻はもっと晴れ女を自認しているらしいのだが,晴れ男と晴れ女の子供が雨男とは…

というわけで,イルカのショーが見られなかったのは残念だが,どのみちこの子はまだイルカたちが何をやっているか理解できないはずなので,いずれ再訪することにして,雨の中を帰路に着いた。

さて,南房方面に出かけたときにはほとんど必ずと言って良いほど立ち寄るナイスプレイスがある。何を隠そうホテルオークラアカデミアパーク。かつて某国際会議のお手伝いなどをした,かずさアカデミアパークの会議場に隣接するちょっぴり高級なホテルである。東京都心にあるのならばさして珍しくもないが,この茫漠たる房総半島のど真ん中に突如出現する高級ホテルなので,つい立ち寄って休憩などしてみる。これでもう5回目くらいかもね。

外の天気は悪いが,ホテルのロビーの暖かなソファに座りちょっぴり贅沢なケーキとコーヒーなどを堪能していると,ホテルの従業員がそのロビーに巨大なスクリーンを設置する作業を始めた。その様子を眺めていて初めて,そうか,今日は大晦日だ,ということに気が付いたわけではないが,実際に今日は大晦日である。外は雨。この分では初日の出ならぬ最後の日の入りは無理だな,と悶々としていると,設置が完了したスクリーンにTV番組が映し出された。なんとも高級ホテルのロビーにふさわしくない音響を伴っていたが,どうやら今晩のイベントのテストらしく,TV番組の内容はどうでもよいらしい。

どこかで餅つきをやっている映像に重なって気象情報のテロップが流れている。最初に目に飛び込んできたのは「関越自動車道月夜野IC〜どこそこ」の文字で,ははぁ,山のほうでは雪が降って高速道路通行止めなんだな,と推測する。しばらく見ていると「首都高速道路全線」と出た。

何?首都高速全線がどうした?

慌てて携帯のポータルサイトの道路交通情報を見ると,確かに首都高速の至る所に×印が付いている。こりゃ参った…

(明日につづく)
posted by gecky at 21:13| 千葉 ☁| | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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